アマチュア野球の変革 社会人野球日本代表でデータ野球のスタート 社会人野球 全日本ジュニア合宿・関東地区レポート

2021年7月下旬に全国6ヵ所で開催された全日本ジュニア合宿。日本代表歴のない選手や社会人入りから年数がたっていない若手の中から選ばれた選手に対して、国際大会について、日本代表の心得などを伝えていく恒例行事だ。例年は東日本、西日本で分けていたが、2年ぶりに開催された今年は、北海道、東北・北信越、関東、東海、近畿、中国・四国・九州に分けて実施された。この背景には、より多くの選手のデータを蓄積し、今後の野球界発展へつなげていきたいという狙いがあった。今回は、関東地区で行われた合宿に密着し、当日の内容や社会人代表の石井章夫監督の狙いなどについてレポートしていく。


関東地区の合宿が行われたのは7月18日。会場となった都内グラウンドには、関東地区のチームから選ばれた28人が集まった。選手たちは、石井監督をはじめ、コーチ陣との顔合わせも兼ねたミーティングに挑んだ。ここでは、3度オリンピックに出場経験を持つ杉浦正則投手コーチが、短期決戦における重要な心構えなどが伝えられた。その中には、「短期決戦で大事なことは、冷めた状態でその期間を戦わないこと。常にアツい気持ちを持ち続けなければ大会は終わってしまう。そして、調子の善し悪しは絶対にあるので、切り替えをできるようになること」というように、自身の経験から得たものが多く、参加選手たちの心に深く刻み込まれたに違いない。

また、「国際大会では、相手のデータがない。その場合には、自分で見たもの、感じたものがデータになるので、それを自身で分析して取り入れていく必要がある。自分でわからない点があれば、チーム全員に共有して新たなデータをつくっていく。だから何もないところから何かを生み出す能力も不可欠。与えられたものを使うのではなく、自分でデータを分析する能力も養わないと全日本のトップレベルで活躍するのは難しい」という話も出ていた。

石井監督からは、現在、社会人が参加できる国際大会についての説明などが話された。その中で、「国際試合に出ることは成長につながるので、チャンスがあればぜひ数多く出場してもらいたい。そこで自分に足りないものなどを感じることができ、このままではいけないと思えることが大事になる。だからこそ国際大会に選ばれるチャンスをつかんでほしい」とエールが送られた。

ミーティング後はグラウンドで数々のメニューが行われた。ウォーミングアップ後には、基礎体力のデータを収集するため、50m走、ボール投げ、反覆ダッシュなどを実施。

そして午後からはグラウンドでの守備練習に加えて、今回の合宿で重要なポイントとなっているラプソードやBLASTといった計測機器を使用した計測を実施し、投手はピッチングにおいて回転数や変化量などを計測。野手はバッティングにおいて、スインススピード、バットの軌道などについて計測を行なった。

練習中、石井監督にデータ収集の狙いを聞くと次のような答えが返ってきた。

「データは内部資料としてだけでなく、蓄積したものを公開していきたいと考えています(9月17日より全日本野球協会HP内で公開中。詳細はこちらへ)。データをオープンにすることで、何かを比較することができるようになり、代表選手選考の基準として活用するだけでなく、競技力の向上にもつながると思っています。トップアマチュアである社会人がそういうことを推進していくことによって、下の世代にも影響してくるとも思いますから。目標としている選手がいればその人の数値が見られるわけですから、そこに向けてどう努力していけばいいかがわかってくると思いますので」

※石井監督の単独インタビュー動画はこちらへ

すべてはアマチュア野球界の発展のため。この取り組みが、いずれ野球界に大きな変革もたらすことは間違いないだろう。

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