「Q&A 事例解説」では一般財団法人全日本野球協会に寄せられる多くの規則についてのご質問の中から、特によく頂く質問をピックアップ。ご質問に対する回答内容を皆さんと共有することで皆さんの理解を深めていただくことを目的としています。 ぜひ、ルールの深掘りにご活用ください。
▼質問内容
先日の試合で、一塁塁審を担当した際のプレイ(右投手・1塁への牽制球)について、質問させてください。お伺いしたいのは、「投手の軸足(右足)の動き」についてです。
ランナー1塁で、投手はセットポジションから牽制球を投じましたが、その際に、軸足を、明確に投手板の前方向(ホームベース方向)に外す(踏みかえる)動きをしました。
一般に、マウンドの形状やスパイクの金具の事情などで投手板から足を離さざるを得ない、というケースはあると思いますが、今回はそうではなく(グランド状況等も不都合なし)、明らかに投手板から離れたところへの、意図した踏みかえと認識しました。
一塁塁審の私としては、球審とも協議のうえボークを宣告しましたが、守備側の監督から、「一連の動きで、左足は1塁方向に踏み出し、かつ偽投はしていないのだから、ボークではない」との抗議を受けることとなりました。
私が問題視しましたのは、通常に足を投手板の後ろに外すのと同様、意図して前側に外している点です。牽制球には投手板から足を外して行う場合と投手板から足を外さないで行う場合の2種類がありますが、このケースにおけるボーク判定は正しいでしょうか。
▼回答内容
結論から申し上げます。質問者が下した“ボーク”の判定は正しい判定です。
2022公認野球規則p45の「5.07(a)(2)セットポジション【注4】」を参照ください。
【注4】投手は走者が塁にいるとき、セットポジションをとってからでも、プレイの目的のためなら、自由に投手板を外すことができる。この場合、軸足は必ず投手板の後方に外さなければならず、側方または前方に外すことは許されない。(以下略)
また、「5.07(d)塁に送球」には以下の記載があります。
投手が準備動作を起こしてからでも、打者への投球動作を起こすまでなら、いつでも塁に送球することができるが、それに先立って、送球しようとする塁の方向へ、直接踏み出すことが必要である。
ご質問の事例の場合は、投手が明らかに軸足を投手板の前方(本塁側)に外したと質問者が確認しているのですから、“ボーク“の判定は妥当です。チームの監督が主張しているのは、5.07(d)【注】に記述の以下の部分だと思われます。
【注】投手が投手板を外さずに一塁へ送球する場合、投手板上で軸足が踏み変わってもその動作が一挙動であれば差支えない。(以下略)
※この規定は、まず、投手が投手板を外さずに一塁へ送球するときのことであること。また投手板上での軸足の踏みかえについては、自由な足の踏み出しと同時であれば構わないことを示しているのですから、質問事例の場合には当てはまりません。

