野球人口の減少ストップへ 県内団体が一枚岩となり取り組む必要性

 2022年12月4日(日)、栃木県のカンセキスタジアムとちぎで「とちぎ野球フェスタ2022」が行われ約2,000人の未就学児や小中学生が集まった。この会場は2022年秋の「いちご一会とちぎ国体」の開会式と閉会式の場所にもなった栃木県内随一の陸上競技場である。

 このイベントは県内の野球団体12組織が連携した栃木県野球協議会(以下、協議会)が主催となって開催された。昨今、野球団体の一致団結や、地域一体となっての野球普及活動が叫ばれる中、このイベントが開催できた意義や、今後について協議会の江部理事長に話を伺った。

(とちぎ野球フェスタ2022で開会宣言を行う江部理事長 写真=協議会提供)

 栃木県の野球と聞くと、往年の野球ファンであれば江川卓の作新学院を連想する方も多い。2010年代からは作新学院が夏の大会で破竹の10連覇を達成し、2016年の夏には現在西武ライオンズに所属している今井達也選手を擁して、全国制覇を成し遂げている。2022年夏の甲子園では國學院栃木高校が37年ぶり2度目の出場を果たし、初のベスト8まで進出をした。NPBの球団は無いが、高校野球を中心として野球熱が高い県である。そんな栃木県の野球界である動きが起こったのが2019年春のことである。JABA栃木県野球連盟と一般財団法人栃木県野球連盟、栃木県民球団の3団体が発起団体となり、協議会設立の構想が始まり、複数回の意見交換会を経て2020年12月に協議会が設立された。

(2020年12月に栃木県野球協議会が発足 写真=協議会提供)

 野球協議会と名が付く団体は他の地域にも存在しており、それぞれに特徴がある。例えば、以前Homebaseの記事(https://homebase.baseballjapan.org/articles/114)でも紹介をしたことがある埼玉県野球協議会は、NPB球団の埼玉西武ライオンズが主要団体として名を連ねており、プロ野球選手が参加する野球教室や、ベルーナドームでのイベントなどの特色がある。新潟県野球協議会では、「野球手帳」というものを作成し、小中学生の肘や肩の故障を防ぐといった取り組みを協議会が主導して行っている。

新しい取り組みへの第一歩

 今回ご紹介する協議会の特徴は、栃木県に本拠地を置くBCリーグの栃木ゴールデンブレーブス(以下栃木GB)の存在と、活動のターゲットを「未就学児から小学校低学年の子どもたち」に置いている点である。

 これまで、協議会では栃木GBのスタッフや選手が幼稚園を訪問し野球体験会を開催したり、栃木GBの公式戦終了後にそのグラウンドで野球教室を行っていた。

(写真=協議会提供)

江部氏はこう語る。

「これまで野球教室などを県内でやってきましたが、野球のシーズン中である春〜秋にかけて活動機会を思うように増やせなかったのが年間を通じての感じたことです。」

 栃木GBを含む協議会に所属している各団体にはそれぞれ大会や試合があり、シーズン中は野球普及・振興の活動をなかなかできないというジレンマがある。そんな中、県内の子どもたちにまずはボール遊びの楽しさを知ってもらう大きな打ち上げ花火のような機会を作ろうというのが冒頭にご紹介した野球フェスタの企画の始まりである。実は、2021年のオフシーズンにも実施を考えていたが、コロナウイルス感染拡大もあり、延期となっておりやっとの思いで実現に漕ぎ着けた「とちぎ野球フェスタ2022」であった。

野球”だけじゃない”野球フェスタ

 この「とちぎ野球フェスタ2022」では、協議会に所属している各団体がそれぞれの持ち場を担当し、参加した子どもたちとの活動を楽しんだ。大学の野球部の選手たちによる野球教室や栃木GBの選手との野球トークイベント、ドクターによる野球肘検診はよく見られる。今回特徴的だったのが、一見すると野球のプレーとは直接関係がなさそうなブースがいくつもあったことである。一番盛り上がっていたのがダンス&ヨガのブースだったという。

「栃木GBのチアリーディングのチームに声をかけて、参加者と一緒にダンスをするという試みを実施しました。予想以上に盛り上がり、子どもたちもそうですが運営側でもあるエイジェック女子硬式野球部の選手やボーイズリーグの選手らも一緒に踊ることで非常に良い雰囲気になっていました」と語るのは江部理事長。

(参加者と一緒に楽しむエイジェック女子硬式野球部の選手たち 写真=協議会提供)

 その他にも近隣の消防署に協力をしてもらい、子どもたちと一緒に参加をした指導者の方や保護者の方を対象にAEDを用いた救急救命講習が行われていた。子どもたちが野球を始めるにあたっては周りの大人の協力が必要である。万が一に備えて安心して野球に取り組んでもらえる環境づくりも必要不可欠である。

(写真=協議会提供)

 「協議会として、加盟している多くの団体を巻き込み、まずはフェスタが開催できたことが一歩前進だと思います。まだまだ課題はありますが、この一歩を大事にしながら継続性を持って野球の普及振興活動をやっていきたいです」

 江部氏の力強い言葉の通り、野球の普及振興には時間がかかる。地道な活動と大きな花火の組み合わせで取り組みを進めている栃木県野球協議会。一筋縄ではいかない団体間での連携ではあるが、子どもたちの未来のため、野球界の未来のために活動を行う栃木県野球協議会の取り組みに今後も注目していきたい。

(了)

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