2年ぶり優勝を果たした「ジャンク5エレメンツ」。日本選手権を通じて見せた“環境の力”と“共生社会の創造”

1月17日〜18日に行われた「侍ジャパンチャレンジカップ 第3回Baseball5日本選手権」。

オープンの部では「ジャンク5エレメンツ」が2年ぶりの優勝に輝いた。1セットも落とすことなく、頂点まで辿り着く圧倒的な強さを見せた王者。

ただ、ジャンク5エレメンツにとってこの選手権は、コート上でのパフォーマンスだけではなく、社会的意義を果たした大会でもあった。※ユース編はこちら

(写真 / 文:白石怜平、以降敬称略)

オープンの部決勝は過去チャンピオンチーム同士の対戦に

オープンの部決勝では「ジャンク5エレメンツA」と「5STARs」とのマッチアップに。

ジャンク5エレメンツAは24年の第1回大会に「ジャンク5」として、5STARsは昨年の第2回大会でそれぞれ優勝している。

両チームとも侍ジャパンBaseball5代表選手を擁しており、ジャンク5エレメンツAでは島拓也・三上駿が、5STARsでは六角彩子・數田彩乃がチームでも中心を担っている。

両者は過去2年とも初戦で対戦しており、勝利した方がそのまま頂点へと登り詰めていた。今回はオープニングラウンドで交わることはなく、互いに勝ち上がっての頂上決戦で相見えた。

過去優勝チーム同士による直接対決に

試合はジャンク5エレメンツが1セット目から主導権を握る展開に。2回まで両軍無得点で迎えた3回裏、この回だけで8点を奪う猛攻を見せる。

このまま5STARsを0点に抑え、8−0で1セット目を先取した。そして2セット目も勢いそのままに初回に2点、2回に1点を追加し3-0とリード。

堅守で相手の得点を1点に抑え、2セット連取でゲームセット。ジャンク5エレメンツAが2大会ぶりに覇権を奪回した。

5試合全てストレート勝ち、失点も10セットでわずか3点に抑えるという攻守で圧倒しての優勝だった。

MVPもジャンク5エレメンツ勢で、男性選手が東翔紀・女性選手は安立梨子がそれぞれMVPを受賞した。

MVPを受賞した東翔紀(写真上)と安立梨子(同下)

強化の好循環を生み出す唯一無二の“環境”

ジャンク5は「ジャンク5エレメンツ」として10月からリスタートを切っていた。

アーバンスポーツという共通点があることなどから、3×3(3人制バスケットボール)の「ADDELM ELEMENTS.EXE」と提携。

競技の垣根を超えて手を組んだことから、チーム名にも「エレメンツ」という名を冠しユニフォームも一新した。

そしてジャンク5エレメンツの強さを語る上で欠かせない要因が“環境”であった。

チームを率いる若松健太監督は桜美林大の准教授で、教育と組み合わせながら普及そして強化にもリンクさせてきた。

優勝を決めた直後に勝因を語った若松健太監督

23年からは大学の授業として単体で開講すると、さらには部活動としてBaseball5部を設立するなど、世界でも類を見ない取り組みを推進していった。

また、若松監督自身も「優勝の大きな要因」と語った環境。

日本代表として世界を知るジャンク5のメンバーと、桜美林大Baseball5部員が合同で活動していることから、高いレベルで切磋琢磨できる状況が構築された。

島が放つ速い打球や三上が塁上を駆け抜けるスピードといった、キューバら強豪国と渡り合ったプレーを毎週体感できるのは大きなアドバンテージとなっている。

また、ハード面においても強化に直結する環境が築き上げられている。昨年春から頑丈なフェンスを完備したBaseball5用のコートを独自で開発し、設置された。

フェンスに響き渡る打球音は選手たちのモチベーションになるとともに、紅白戦も毎週行えることから実戦機会も継続的に確保された。

日本選手権の準々決勝ではジャンク5エレメンツ同士の対決に

侍ジャパンBaseball5代表監督として指揮を執り、選手たちと共に世界を知る若松監督。コート整備には経験と意図があった。

「クッションボールの処理が勝敗を分ける要因なのは明確です。体育館の壁と、大会でプレーするコートのフェンスでは、視界的な要素も大きく異なります。

塵も積もれば山となるという言葉がありますが、毎週フェンスを利用した質の高い練習を実施していると、自然と体に染みついていいプレー・堅実なプレーができるようになります。日本選手権では全員が普段通りに力を発揮してくれたと思います」

ジャンク5エレメンツはA・Bの2チームともに選手権本戦へと出場し、準々決勝でAとBが直接対決した。

オープンの部と同じく2チームで参加した桜美林大学は、Bが選手権に出場。予選で東京ヴェルディ・バンバータを2セット連取で勝利するなど準々決勝へと進出し、ベスト8の中に3チームが食い込んで見せた。

桜美林大学Bもベスト8入りを果たしている

Baseball5を通じた「共生社会の創造」にも貢献

今回の選手権においてジャンク5エレメンツは、強さの他に社会的な意義を果たしていた。それは、Baseball5を通じた「共生社会の創造」である。

12月のユース予選では「パラジャンク5エレメンツユース」が初出場していた。同チームは、特別支援学校に通う生徒で構成されているのが大きな特徴である。

特別支援学校の生徒が出場した「パラジャンク5エレメンツユース」(チーム提供)

昨年9月に結成し初の選手権予選へと臨んだが、これは5年の歳月をかけて実現していた。

ジャンク5エレメンツは21年から3年間、山形県の企業を対象に障がいがある人たちへの自立・就労支援の一環として、Baseball5を通じた交流を行っていた。

ここでの経験から「Baseball5は障がい者スポーツとしての未来がある」と確信を抱いた若松監督。

“ボール一つで誰でもできる”という特性から、特別支援学校の生徒でも健常者と真剣勝負ができると考え、昨年その動きを一層推し進めた。

1月・5月・7月に桜美林大がある町田市をはじめ、主に多摩地域に所在する特別支援学校4校を招待した体験会を開催し、生徒たちはBaseball5の魅力を知った。

そこから選手が集まっていき、9月には男女4人ずつの8名が揃ったことでパラジャンク5エレメンツユースが本格始動した。

オープンのメンバーや桜美林大生からも教えを受けたユース選手たちは、回を重ねるにつれて心身共に成長していった。

「捕る・投げる・打つ ・走るといった一つ一つのプレーに対して真剣でしたし、指導者の話にもしっかりと耳を傾けてくれました。

練習だけでも進化がとてつもないイメージで、当時から『この子たちが特別支援教育やパラスポーツの新たな扉をこじ開けるんだろうな』と感じられるほどの熱気が伝わってきました」

選手たち自ら考え、ミーティングも行った(チーム提供)

迎えた12月14日の予選当日ではアウトを取った時やヒットを打った時、そして得点を挙げた時にベンチ一体が喜びを共有する。次第に会場全体で応援する雰囲気が醸成されていった。

若松監督のもとには、息子・娘の躍動を見守った保護者たちから数々の感謝の言葉が寄せられた。

”今まで娘には色んな経験をさせたいと思ってやってきましたが、この一日で娘の変化の目まぐるしさにとても感動しました。色んな方々から沢山の愛情を注いでもらって、大きく花開けた1日でした”

“Baseball5を通じてたくさんの仲間と出会わせていただいたこと、自分たちの言動を認めてくれて、その力を発揮させてもらえる環境作りに多くの人がいるということ、この先社会に出る前に本当にいろいろなことを学べる時間を過ごすことができ、親子共々貴重な経験をさせていただき感謝の気持ちでいっぱいです”

試合終了後は、最後まで戦い抜いた姿勢に保護者や運営スタッフまでもが涙を見せたシーンもあるなど、勝負を越えた感動に包まれた。

さまざな絆を深めたユースでの予選。スタッフ陣の間でも“来年こそ勝利”を合言葉に結束を固め、第4回選手権に向けた構想を早くも練っている。

連覇を目指すと共に地方創生へも注力

大会優勝そして共生社会の創造という両面を刻んだジャンク5エレメンツ。「選手権の結果に対してはまったく奢ることはない」として、注力する取り組みについてこう明かした。

「ジャンクが取り組んでいる活動内容は、とても重要だと思っています。特に地方と関東圏との差がまだ大きいので、地方に働きかける動きは力を入れたいです。

優勝は通過点ですし、『維持は衰退』なので『向上していくこと』しか今は考えていません。大会に関していうともちろん“連覇”。そして決勝をジャンク同士もしくは桜美林大対決にすることが次回の目標です。

あらゆる視点での環境づくりを徹底することで他チームの模範となり、また今回と同じ景色が見れるように地道に、地道に活動をしていきたいです」

優勝の2文字だけでは表せない価値を示したジャンク5エレメンツは、今年も強化×普及×教育の3軸を推し進め、Baseball5発展の旗振り役を担う。

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