日本野球科学研究会では、野球競技の普及・発展のために科学的研究を促進し、情報を指導現場と研究者間で活発にすることを目的として活動しています。
Homebaseでは、日本野球科学研究会運営委員会代表である平野裕一氏が研究会で発表された研究を元に、指導現場で広がって欲しい情報をご紹介いたします。
生まれ月が学業やスポーツの成績などに与える影響のことを「相対的年齢効果」といいます。
日本では4月から翌年の3月までに生まれた子どもを一緒にして1学年としますので、同じ学年でも4~6月生まれの子どものほうが7月以降生まれの子どもよりも生まれてからの年月が長く、成長が進んでいることになります。
そしてスポーツでは学年ごとのレース、学年ごとの対戦として試合が行われることが多いので、生まれ月が競技成績に影響してくるのです。
中学生で野球経験は2年以上あるけれど県レベル以上の大会には出場したことのない選手28名(BB)と全国大会に出場した投手25名(TOP)の生まれ月が比べられています。
その結果は、BBの選手たちは4~6月生まれが36%と少し多いものの、4つの生まれ月グループにおよそ均等に分かれていました。それに対してTOPの投手たちは40%が4~6月生まれ、44%が7~9月生まれ、早生まれの投手はいなかったという偏ったものでした(下図、勝又ほか、2017)。
この結果から、一般的な中学生の野球選手の競技力に生まれ月は影響しないが、トップレベルの中学生投手には生まれ月のおかげで投手に選ばれている場合が多いと言えそうです。
トップレベルの試合に登板できるのは本人にとっては楽しいことですが、そのおかげで投げ過ぎになると故障につながる危険性は高くなります。
中学生以降の野球選手については調べられていませんが、陸上競技では成人の選手になるまで生まれ月の影響が調べられています(森丘、2014)。
それによると、確かに中学生までは相対的年齢効果が認められますが、高校生以降になるとその影響はほとんどなくなると言われています。生まれてからの年月が長くなれば1年間の中での成長の差は小さくなるからでしょう。
中学生までの選手をみている指導者は、練習や試合の中で生まれ月が影響した選抜になっていないか、そのおかげで投げ過ぎたり、くたびれ過ぎたりしていないか、常に注意を払いたいものです。

