プロ・アマ合同の日本野球規則委員会は、2021年1月27日に協議を行い野球規則について2021年度における改正を発表しました。
今回改正されたのは、ファウルチップの定義の変更をはじめ12項目となります。また2020年に、メジャーリーグで採用されたことで注目を集めました先発投手および救援投手の投球義務に関する規則については、2021年度は我が国で採用することを見送っております。ここでは、改正12項目から(1)~(2)についてご説明します。
(1)5.10(g)の改正
※5.10はプレーヤー交代に関するルールを示す
(g)には、以下が記載されています。
ある投手に代わって救援に出た投手は、そのときの打者または代打者がアウトになるか一塁に足するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以後投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。
以下はマイナーリーグで適用される。先発投手または救援投手は、打者がアウトになるか、一塁に達するかして、登板したときの打者(または代打者)から連続して最低3人の打者に投球するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以後投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。
<変更点>
5.10(g)に以下を追加する
【注】本項後段については、メジャーリーグでも適用されるが、我が国では適用しない。
本項後段とは、2020年にメジャーリーグで採用された「先発投手または救援投手は、登板したときの打者から連続して3人の打者に投球する義務がある。」という規則を指しています。我が国ではプロ・アマともに次の理由から、今年の導入を見合わせることにしました。
① Official Baseball Rulesの原文には、5.10(f)の「球審に手渡された打順表に記載されている投手は、第一打者またはその代打者がアウトになるか一塁に達するまで投球する義務がある。」が記載されたままであること。
この(f)と(g)の矛盾点について、MLBの規則委員会に問い合わせをしたが、我々が納得できる回答は得られなかった。
② WBSC(世界野球ソフトボール連盟)及びBFA(アジア野球連盟)が国際大会において、この新しい規則を採用するか否かが、現時点において不明であること。
上記①の矛盾点を併記したままでは、混乱を招く恐れがあるとともに、国際大会で
の対応を見極めたうえで再度検討することが望ましいと判断しました。
(2)定義34「ファウルチップ」および5.09(a)(2)の改正
※5.09(a)は打者のアウトについてのルールで、(2)には、第3ストライクと先行kされた投球を、捕手が正規に補給した場合。と記されています。
<定義34の変更点>
定義34を次のように改め(波線部を削除)、【注】を削除する。
打者の打ったボールが、鋭くバットから直接捕手の手に飛んで、正規に捕球されたもので、捕球されなかったものはファウルチップとならない。ファウルチップはストライクであり、ボールインプレイである。前記の打球が、最初に捕手の手またはミットに触れておれば、はね返ったものでも、捕手が地面に触れる前に捕らえれば、ファウルチップとなる。
<5.09(a)(2)の変更点>
【原注】後段を次のように改める。
チップしたボールが、最初に捕手の身体または用具に触れて、はね返ったものを捕手が地上に落ちる前に捕球した場合、ストライクであり、第3ストライクにあたるときには、打者はアウトである。>
今回のファウルチップの定義の改正と【注】の削除、それに関連する5.09(a)(2)【原注】の後段の改正により、チップしたボールが最初に捕手の身体または身に着けている用具(マスク、プロテクター、レガースなど)に触れて、はね返ったものを捕手が地上に落ちる前に捕球すれば“ファウルチップ”と認められることになりました。
従来の規則では、最初に捕手の手またはミット以外のものに触れてはね返ったものは、たとえ地面に落ちる前に捕手が捕らえたとしても、ファウルボールと判定されていました。
ファウルチップはストライクであり、第3ストライクにあたるとき打者はアウトとなりますので、大きな改正です。
野手がインフライトの打球を地面に触れる前に捕らえれば、その前にジャッグルしたり、身体にボールが触れたりしても正規の捕球となるのと同じ理屈ですが、ファウルチップの場合は、他の野手が捕球したものは認められず、あくまでも捕手が捕球することが必要です。
また、チップしたボールが捕手のマスクに挟まった場合も正規の捕球ではありませんので、ファウルボールと判定されます。

