U-12世代におけるバッテリーの適性について考える 〜信頼を得られる指導者になるための極意〜

野球はもちろん、多くのスポーツにおいて世代ごとで指導法は異なります。なぜなら、体の成長具合も異なるだけでなく、プレーに対する考え方や練習量なども違ってくるからです。

そのため、指導者は教える選手の世代に合った指導法を取る必要があります。このコーナーでは、世代別に指導者が知っておくべきポイントをレクチャーしていきます。

今回は、筑波大学の准教授で硬式野球部の監督として数多くの選手を育てる傍ら、野球の普及活動にも取り組み学童・少年野球にも精通している川村卓氏に、U-12世代でのバッテリーの適正について紹介してもらいます。

 どんな選手がピッチャーに向いているか、またキャッチャーに向いているかという判断において、全世代に共通して言えるポイントは“速いボールを投げられる”、“肩が強い”という2点です。

では、体が成長途上であるU-12世代において、最初から肩が強く、速いボールが投げられるという選手はあまりいないと思います。

そこで肩が強くなる、速い球を投げられる可能性を秘めた選手を見分けるには、肩甲骨や肩の周りの筋肉がとてもよく動いているか、言い換えれば、肩の可動域が広く、動きがやわらかいかチェックすることになります。

チェック方法として私が講習会などで話しきたのは、伏臥上体反らしをやらせること。これで60㎝以上を上げられると柔軟性が高いとされ、そういう選手は胸を張れて、肩甲骨を寄せたりすることができるので、非常に将来性があると言ってきました。

 ピッチャーにおいて肩以外では、足のバネが強いかも適正のポイントになります。これは小学生の場合、走ること全般が得意かを基準にしてもらえればと思います。

これを踏まえていえば、U-12世代でピッチャーに向いている子は、運動能力の高さを判断基準にするといいかもしれません。

 その一方で、肩の可動域が広く、動きがやわらかいからといって、その時点で速いボールが投げられるというわけではありません。そのため、指導者としては将来性を考えてピッチャーに向いているという判断をする必要があります。

また成長途上の小学生は、その時点で柔軟性がない選手でも、トレーニング次第では柔軟性を身につけられます。トレーニングといってもやることは簡単で、肩をよく動かすだけです。

しかも投げることだけに特化することなく、バドミントンのラケットを振るような動作を行ったり、水泳をしたりと、野球から少し離れた動作をやることによって、素質を身につけることはできます。

今年メジャーリーグで大活躍した大谷(翔平)君も、最初は体が硬かったと聞きますので。

 逆に難しいのが、体がやわらかい子どもに適切な筋肉をつけることです。それでも、腕立て伏せや逆立ちなどをトレーニングに組み込むことで、徐々に筋肉はついてきますので、覚えておいてください。

 キャッチャーの適正でいえば、スピード感が求められる時代になっていますので、体が小さい子が向いていると言えるかもしれません。

昔は、体が大きい子が向いている言われていましたが、今は、ブロッキングも含めて打球処理の俊敏性も求められれますので、将来を考えて動けることが重要になっていると思います。

 今、U-12世代のキャッチャーがセカンドに送球する際、ワンバウンドで送球させるのが主流になっていると聞きます。

これは、アウト、セーフの観点に置いては間違っていないのですが、肩を強くするという側面でみれば、ノーバウンドでのセカンド送球にもチャレンジする練習も行ってもらいたいと思います。

 今回、説明した適正については、あくまでも参考意見として頭に入れておいてください。なぜなら、先に話したように、小学生は成長途上で、トレーニング次第で変化が生まれるからです。

そのため指導者は選手の希望も聞きながら、全員に、ピッチャー、キャッチャーの適正の可能性があることを伝えてください。

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