侍ジャパンU-12代表・井端弘和監督インタビュー(1)バント無しで世界4強「スピードとパワーを兼ね備えられるのが日本」

(サムネ画像提供 SAMURAI JAPAN/Gettyimages)

 今年7月28日から8月6日にかけて台湾・台南市で行われた「第7回 WBSC U-12 ワールドカップ」。井端弘和監督が率いた侍ジャパンU-12代表はオープニングラウンドでチャイニーズ・タイペイとベネズエラに敗れたものの、スーパーラウンドでは韓国、アメリカ、ドミニカ共和国に3連勝を果たした。3位決定戦ではベネズエラに敗れたものの4位。また、アメリカにこの世代のW杯では初めて勝利を収める7対0の快勝、バントを用いずにアメリカに次ぐ大会2位の9試合17本塁打を放つなど、これまでの日本野球のイメージを覆す大きなインパクトを残した。

 そこにはどんな準備や狙いがあったのかなどを井端監督に聞いた。

掲げたのは「力負けしないパワー野球」

――大会閉幕からある程度時間が経ちましたが、振り返ってどんなチームでしたでしょうか?

 4位という結果ではありましたが世界一になってもおかしくないチームでした。力もありましたし、助言に対しての実行力があるチームでした。野球以外の規律を守るという部分でも素晴らしかったですね。

――U-12世代ですと成長の早い・遅い、体の大きい・小さいなどもありますが、選手選考で意識されたことはどんなことでしょうか?

 たとえU-12でも「力負けしないパワー野球」を掲げました。ある程度それを今年は実践できたかなと思います。投手はパワー系と思っていたのが皆川旺介(東京城南ボーイズ)だけだったのですが、上手くスーパーラウンドのアメリカ戦にぶつけて、0点(先発し5回3分の1を2安打8奪三振)に抑えてくれました。どの世代でも世界一のために倒さなければいけない相手はアメリカですし、U-12W杯でアメリカを倒したのも初めてでしたから、そうした面では満足できる大会でした。

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――皆川投手は当初からアメリカ戦の先発と決めていたのですか?

 決めていました。技術や制球でなんとかしようとする投手はたくさんいても、パワーで対抗できるのは皆川だけでしたからね。最初から「アメリカ戦で力を最大限に発揮してくれ」と伝えていましたが、想像以上の投球をしてくれました。

「侍ジャパンとしての戦い方」が一本化できれば価値は上がる

――パワーという面でも、企図は1度のみありましたが結果としてバントは0、本塁打もアメリカの18本塁打に続いての17本を放ちました。

 贔屓目無しに日本が最も長打力があったのではないでしょうか。特にスーパーラウンドは間違いなくどこよりも強かったと思いますね。最後はオープニングラウンドから持ち越された2敗が響いて、3位決定戦に回りました。そこでどうしても子供たちの気持ちも下がって敗れてしまいましたが、決勝に行けていればもっと良い力が出ていたのかなと思います。

――それだけスーパーラウンドの戦い、選手たちの躍動は素晴らしかったですよね。

 自分も驚くほどでした。特にアメリカ戦は力負けせずに完封もしましたし、理想の試合ができました。

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――以前から「“日本の野球”として言われてきた攻撃スタイルが「細かく繋いで」というような固定概念だったかと思うのですが、それを打ち崩せたという思いもありますか?

 そうですね。タイブレークで1度バントは試みましたがワイルドピッチしてやらずに済みました。でも、もともとほとんどやるつもりはありませんでした。タイブレークの時は下位打線から始まり、バントの得意な阿部奏(東京城南ボーイズ)がいて、以前から彼にはこうした場面でのバントは伝えていたので試みました。

――大会を通して「バントの必要が無い野球」で勝ち上がりましたね。

 スピードとパワー。この2つを兼ね備えているチームが強いと思いますし、兼ね備えられるのが日本だと思っています。トップチームがそうなってきますし、どの世代でも「侍ジャパンとしての戦い方」が一本化できるようになってくれば、侍ジャパンの各世代の野球の価値が上がるのかなと思います。トップチームもバントはしますが必要最低限。打ち勝つ野球を栗山英樹監督や稲葉篤紀監督、それ以前の監督もしてきましらから、それ子供たちにも受け継いで欲しいと思ったので、バントをやらせるつもりはほとんどありませんでした。

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