2023年7月6日(木)に開催されたHomebase特別セミナー「運動部活動の地域移行と野球界の取り組み 〜中学校の野球部が今後向かっていく先とは〜」のアーカイブ動画を公開いたします。
当日は今後の中学野球界に関心を持たれている多くの方々にお集まりいただきました。
カルティベータの代表理事として中学部活動の地域連携についてのセミナーにも多数登壇をしている宮嶋氏。NF(国内競技連盟)としてアマチュア野球の普及、発展を目指し活動をしているBFJ事務局長の長久保氏。スポーツ庁の地域スポーツクラブ活動アドバイザーでありながら、学校現場にも詳しい石川氏。それぞれの立場で部活動の地域移行の問題と向き合う3名による特別セミナーを開催いたしました。
<ファシリテーター>
宮嶋 泰子 氏
(一社)カルティベータ代表理事
(公財)日本スポーツ協会 地域クラブ育成委員会 委員
スポーツ文化ジャーナリスト
<スピーカー>
長久保 由治 氏
BFJ(全日本野球協会)事務局長
石川 智雄 氏
新潟県長岡市 教育委員会学校教育課
スポーツ庁 運動部活動の地域移行に関する検討会議委員
スポーツ庁 地域スポーツクラブ活動アドバイザー
当日ご参加いただいた方から多くの質問をいただきましたが時間の都合で回答できなかったものがございました。
下記にて回答いたします。ご参考にしていただければと思います。(回答者:石川 智雄氏)
【質問1】
資格取得の必要性は、子どもたちへの適切な指導という意味で非常に大切だと思いますが、このことにより、今以上に地域間格差…地方における指導者の少なさが、子どものやりたい競技をさせてあげられない状況が生じる気がいたします。その地域間格差について、何か対策は検討されておられるのでしょうか?
▼回答
・地域間格差という視点では、スポーツ庁検討会議で出されたデータによると、人口10万人あたりの地域におけるスポーツ指導者数では、関東や近畿など大都市圏の比率が低いのが実態です。
(https://www.mext.go.jp/sports/content/20220126-spt_sseisaku02-000020176_05.pdf)
スライド23,24参照
・指導者資格取得は推奨しますが、資格保有者=地域指導者=クラブ数にはなり得ないことも予想されます。自治体の中には、それぞれ独自の指導者認定システムの導入を検討しているところもあります。当市(長岡市)でも同様に、資格保有有無に関係なく、独自の講習の受講義務付けを検討しています。
【質問2】
学童野球チームの運営に携わっています。中学クラブチーム設立も視野に入れていますが、地域移行を進めるにあたりクラブチーム連携は避けられないと感じています。それにあたり公立小中の学校開放の運営制度改革も避けて通れないと感じています。この点は既に動きはありますでしょうか。「場所=学校校庭」の開放ならびに共有の実現も欠かせないと思います。
▼回答
・国の検討会議、また令和4年12月にスポーツ庁・文化庁より出された「学校部活動及び新たな地域クラブ等に関する総合的なガイドライン」P19(6)の記載にもあるように、学校施設の開放を積極的に呼びかけています。公共施設の利用がメインになると、これまで活動していた社会人等の活動機会の減少などの新たな課題が発生することが考えられます。
・当市(長岡市)で検討していることとしまして、現在小中学校の夜間開放を行っていますが、例えば18:00~20:00をジュニア優先時間(社会人指導者が指導可能な時間を考慮していますが、可能なら17:00~19:00も検討対象としています)として設定するなど、担当部署も検討委員となり、検討しています。
【質問3】
ドイツを含むヨーロッパでは、子どもにもスポーツをする権利があることが、認められていて、子どもがスポーツを楽しむのは当たり前という土壌があるから地域スポーツが成り立っていると思います。日本のスポーツ基本計画では、”スポーツを通じて豊かな生活を営む権利がある”というように、スポーツをする権利が明確に示されていない中で、地域移行して子どものスポーツ機会が担保できるのか疑問に思っています。石川さんはその点、どうお考えでしょうか。
▼回答
個人的には、日本の部活動システムほど、多くの子どもたちにスポーツ・文化芸術環境を提供できる方式に勝るものはないと考えています。しかし、この制度での将来的な持続が困難であることから議論されてきたものです。そもそも現在でも「部活動」は法的に設置の必要はない活動で、「部活は学校(教員)がやるので当たり前」は通用しなくなっています。現に教員の勤務状況から教員志望者の減少=教育の質の低下が懸念されています。このような状況から、「機会が担保できるのか」ではなく「担保しなければならない」という考え方を社会全体が共有し、だれかがやってくれるではなく、子どもを社会全体で育てるのが大人の役割として、当事者意識をもってもらうことが大切です。そのための多くの人に理解してもらうことを最重視した活動をしています。

