〔データ分析競技会概要レポート〕國學院大學チームが最優秀賞に輝く

 

 第2回野球データ分析競技会(全日本野球協会(BFJ)・日本野球連盟(JABA)共催)が、2023年2月22日・23日に、東京都新宿区のJapan Sport Olympic Squareで開かれた。昨年から始まったこの大会は、大学院・大学・高校に通う学生が3人一組でチームを編成して参加する。書類選考を通過しファイナリストとなった6チーム(※)は、22日に与えられた野球のトラッキングデータ(社会人野球の主要大会で計測されたデータ)を23日の午前10時45分までに分析し、プレゼンテーションにまとめ、“野球の競技力向上”のテーマのもと10分間の持ち時間でそれぞれの発表を行った。

▼各チームの詳細記事(随時更新予定)

最優秀賞・國學院大學チーム 空振りを取れる4シームへと導く指標を分析

優秀賞・同志社大学Bチーム YouTubeをヒントにフォークボールに関する新提言

祇園北高校チーム 野球部マネージャーが出場した全国大会


 昨年のファイナリストの中にはアナリストとしてNPBの球団に入団した者もいるこの大会は、アナリストの育成やデータに基づいた指導の質の向上、そして野球の質を向上させることを目的に行われている。各チームは独自の視点で与えられたデータを分析。今大会は「データを一人歩きさせず、競技力向上にどのように役立つか」をポイントにBFJ医科学部会員、JABAアスリート委員で野球のトラッキングデータの専門家である神事努審査員長を中心とした審査員が採点し、データ分析能力を競った。

大会終了後の集合写真

 決勝プレゼンテーションは同志社大学(A)、慶応義塾大学、立命館大学大学院、広島県立祇園北高等学校、國學院大学、同志社大学(B)の順に行い、最優秀賞には「ストレートで空振りを奪いたい~Vertical Approach Angle~」をテーマに発表した國學院大学が選ばれた。発表の途中で野球の神様が現れる寸劇を交えながら、リリースされたボールがホームプレートを通過するときの角度(VAA)に着目した分析を行った。優秀賞には「ビッグイニングを防ぐ高めのフォークの可能性」をテーマに発表した同志社大学(B)が選出された。元メジャーリーガーの上原浩治氏と藤川球児氏のYouTubeでの対談で「高めのフォークが使える」と話していたことをヒントに、高めにフォークを投じた際のカウントごとの投球結果を算出した。

優秀賞に輝いた同志社Bチーム

 ファイナリストの発表後、会の後半は「Bridge the Gap~最前線で戦うチームのデータ活用~」をテーマにシンポジウムが開催された。第一部では「データを活用した目標設定と指導のあり方」と題し、神事氏と関西大学人間健康学部の堀内元氏がシンポジストとして登壇。スイングスピードを増大させるために、バットへ伝達されるエネルギー生成などのメカニズムを堀内氏が解説した。

シンポジウム第一部の様子

 第二部には2022年10月に台湾で行われた第4回 WBSC U-23ワールドカップで優勝した侍ジャパンU-23の石井章夫監督、甲元訓コーチ(ピッチングコーディネーター)が登壇し、島孝明クオリティーコントロールコーチはオーストラリアからのオンラインで参加。3氏が、ワールドカップで実際に行われたデータの活用法について詳細に解説した。各選手のポテンシャルが可視化でき、全国から同じ基準で選手を選出できたことや、これまでのように対戦相手を分析するだけでなく、今回は自国の選手をデータによって評価し、投手であれば先発・中継ぎ・抑えのどの役回りに適性があるのかなどを判断したことなどが明かされた。石井監督は「データを公開することで日本の野球文化の発展につながる。選手の成長をいかに考えていくかが大切」と話した。

国際大会の現場でのデータ活用についての報告がなされた

 新たなデータの分析法やスキルアップのトレーニングにもつながるバイオメカニクスの話題、実際にデータを活かして世界一になったU23侍ジャパンの話など、今回のテーマである「野球の競技力向上」につながる提言が盛りだくさんの大会となった。

※ ファイナリスト7チームのうち1チームが諸般の事情により欠席

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